「歯並びはきれいになったのに、歯茎が下がって歯が長く見えるようになった」――これは矯正治療でよくある失敗の一つ、歯茎が下がる(歯肉退縮)というトラブルです。矯正治療を受けた方の約4割に、治療後5年の時点で歯肉退縮が確認されているというデータもあります。本記事では、その発生率や原因を数値データとともに解説し、歯茎が下がるのを防ぐために大阪つつい歯科・矯正歯科が行っている専門的なアプローチをご紹介します。
矯正治療でよくある失敗「歯茎が下がる(歯肉退縮)」とは
歯肉退縮とは、歯を覆っている歯茎(歯肉)が下がり、本来は隠れているはずの歯根が露出してしまう状態です。歯が長く見える、知覚過敏が起こる、見た目が気になるといった症状に加え、歯根が露出することで虫歯や歯周病のリスクも高まります。歯並びが整っても、土台となる歯茎や骨のケアが不十分だと、この歯肉退縮を招いてしまうことがあります。
データで見る歯肉退縮の発生率とリスク
矯正治療と歯肉退縮の関係については、海外の学術研究でも詳しく調査されています。
約40%
矯正治療後5年で歯肉退縮が起きた人の割合
18歳以上
歯肉退縮のリスクが有意に高まる年齢の境界線
治療5年後の発生率は約40%
2013年にオランダの研究グループが発表した論文では、矯正治療を受けた302名を対象に、治療前・治療直後・2年後・5年後にわたって経過を追跡しています。その結果、治療終了から5年が経過した時点で、全体の約40%の症例に歯肉退縮が確認されました。矯正治療は歯並びを整えるだけでなく、歯茎の健康にも長期的な影響を及ぼしうることが、このデータからわかります。
リスクが高まる境界線は「18歳以上」
同研究では、年齢が高い患者ほど歯肉退縮のリスクが有意に高くなることも示されており、そのリスクが跳ね上がる年齢の境界線は18歳とされています。40代や50代といった高齢期だけでなく、18歳以上で矯正治療を始める「大人の矯正」の段階で、すでに歯肉退縮のリスクが大きく高まる点は、治療計画を立てるうえで重要なポイントです。
なぜ矯正治療によって歯茎が下がるのか?
歯肉退縮が起こる背景には、歯を支える土台である歯槽骨(しそうこつ)の厚みと量が関係しています。
歯槽骨が十分な場合
歯茎が歯槽骨という土台にしっかり支えられているため、位置が安定しています。歯根も骨に覆われており、歯肉退縮のリスクは低い状態です。
歯槽骨が薄い場合
歯根が骨の外側にはみ出しやすく、歯茎を支える土台が不足しています。歯根を覆う骨が失われやすいため、歯肉退縮(歯茎が下がる)が起こりやすくなります。
歯を支える土台「歯槽骨」の厚みと量
歯茎(歯肉)が現在の位置を保っていられるのは、その直下に歯槽骨という強固な骨が存在しているためです。この骨が薄かったり量が不足していたりすると、歯茎はそれを支える土台を失い、骨の減少に伴って下がってしまいます。
無理な歯の移動によるリスク
もともと歯根の形が透けて見えるほど骨が薄い状態や、歯が重なり合ってデコボコになっている状態のまま、土台を補強せずに歯を大きく移動させたり、そもそも収まりきらない歯の本数を、歯根が骨の外側にはみ出してしまうことがあります。こうなると歯根表面を覆う骨が失われ、歯肉退縮が引き起こされやすくなります。事前に骨の状態を精査せずに歯を動かしてしまうことが、歯茎下がりという失敗につながる大きな要因の一つです。
歯肉退縮を防ぐ臨床的なアプローチ「歯周組織増生(グラフト)」
歯肉退縮のリスクを抑えるために、近年の臨床現場では骨移植(GBR)や軟組織(結合組織)移植を組み合わせて土台を強化するアプローチが取り入れられています。
ピエゾシジョンと骨・軟組織移植の併用
超音波の振動を用いて骨に微細な刺激を与え、歯の移動を促進する「ピエゾシジョン」という処置と同時に、骨や歯茎の移植を行うことで、歯根周囲の骨と歯茎を補強しながら矯正治療を進める方法があります。骨や歯茎の厚みが不足している症例では、この組み合わせが歯肉退縮予防の有効な選択肢となります。
移植のタイミングが重要な理由
骨や組織の移植は、矯正治療の前後ではなく「治療中」、特にピエゾシジョンによる刺激を加えた直後に行うことが効果的とされています。骨に微細な刺激が加わることで局所加速現象(RAP現象)と呼ばれる反応が起こり、成長因子やケモカインなど治癒を促す物質が活発に働くためです。この治癒力が高まったタイミングで移植を行うことで、移植した組織が周囲と早く、かつ良好に結合しやすくなります。
治療後は骨がより丈夫になるケースも
ピエゾシジョンと骨移植を併用した場合、施術から4~6ヶ月ほどで再石灰化が進み、移植を行わなかった場合と比べて骨密度が10~15%ほど高くなるとの報告もあります。歯茎下がりを防ぐだけでなく、矯正後の後戻りが起こりにくい安定した歯周組織を作ることにもつながります。
歯茎下がりのリスクを抑えるために大阪つつい歯科・矯正歯科が行っていること
当院では、矯正治療を開始する前にCT撮影を行い、歯槽骨の厚みや量を精密に分析したうえで治療計画を立てています。骨や歯茎が薄く歯肉退縮のリスクが高いと判断した場合には、矯正治療単独ではなく、必要に応じて骨・軟組織移植を組み合わせた治療をご提案しています。特に18歳以上の成人矯正をご検討中の方には、事前のリスク評価を丁寧に行うことが、将来の歯茎下がりを防ぐ第一歩になると考えています。矯正治療と歯周組織の両面から専門的に診断・治療できる体制が、当院の特徴です。
歯茎が下がるのを防ぐために自分でできるセルフチェック
矯正治療中・治療後に歯茎が下がるリスクをできるだけ抑えるためには、日頃のセルフチェックも大切です。歯の根元が以前より長く見えないか、冷たいものや歯磨きの際にしみる感覚がないか、歯茎の色や厚みに部分的な違いがないかを定期的に確認しましょう。矯正装置がついている部分の歯茎に腫れや出血が見られる場合も、注意が必要です。こうした変化に気づいたときは自己判断で様子を見るのではなく、早めに担当の歯科医師に相談することが、歯茎が下がるのを防ぐための第一歩になります。
よくある質問
Q. 矯正治療をすると歯茎が下がることは必ずありますか?
いいえ、必ず歯茎が下がるわけではありません。ただし研究データでは矯正治療後5年で約4割の症例に歯肉退縮が確認されており、特に歯槽骨が薄い方や18歳以上で治療を始める方はリスクが高まる傾向があります。事前の骨・歯茎の状態評価によってリスクを抑えることが可能です。
Q. 下がってしまった歯茎は元に戻りますか?
一度下がった歯茎が自然に元の位置まで回復することは基本的にありません。気になる場合は、歯茎や骨の移植など専門的な治療で改善を図ることができるため、早めに歯科医院にご相談ください。
Q. 何歳頃から注意が必要ですか?
研究データでは18歳がリスクの高まる境界線とされています。10代後半以降で矯正治療を検討されている方は、治療開始前に歯茎や骨の状態を確認しておくことをおすすめします。
まとめ
矯正治療でよくある失敗の一つである「歯茎が下がる」現象(歯肉退縮)は、歯を支える骨の状態を十分に評価しないまま治療を進めることで起こりやすくなります。5年後に約40%、18歳以上でリスクが高まるというデータからも、事前の骨・歯茎の精密な診断がいかに重要かがわかります。大阪つつい歯科・矯正歯科では、矯正治療と歯周組織の両方に精通した専門的な視点から、歯茎が下がるリスクを抑えた治療計画をご提案しています。歯並びだけでなく歯茎の健康も含めた矯正治療をご希望の方は、ぜひ一度当院までご相談ください。