【歯の根元がえぐれてる?】それは虫歯じゃないかも。「くさび状欠損」の原因と治し方を歯科医師が解説
そのえぐれ、虫歯ではなく「くさび状欠損」かもしれません
歯の根元のえぐれの正体は、多くの場合「NCCL(非う蝕性歯頸部欠損)」、通称「くさび状欠損」です。その名の通り「虫歯ではない原因によって、歯の首元(歯頸部)が失われていく症状」のことを指します。
虫歯は菌によって歯が溶かされ、茶色や黒に変色しネバネバと軟らかくなりますが、くさび状欠損は硬くツルツルしているのが特徴です。「虫歯じゃないなら安心」と思いがちですが、放置すると知覚過敏や歯の破折につながるため、正しい知識で対処することが大切です。
なぜ歯が削れる?くさび状欠損を引き起こす4大原因
くさび状欠損は、どれか一つの原因ではなく、複数の要因が絡み合って発生します。
- 原因① 強すぎる歯磨き(過圧ブラッシング)
良かれと思ってゴシゴシ磨く習慣は、歯を削る最大の原因です。特に歯の根元は柔らかいため、強い力で磨き続けると摩耗してしまいます。 - 原因② 研磨剤入りの歯磨き粉
歯を白くする歯磨き粉に含まれる研磨剤は、強すぎるブラッシングと合わさると、まるで“ヤスリ”のように歯を削り、摩耗を加速させます。 - 原因③ 酸による侵食(酸蝕)
お酢や柑橘類、スポーツドリンクなどを頻繁に口にすると、酸で歯の表面が柔らかくなります。この状態で歯を磨くと、通常より歯が削れやすくなります。 - 原因④ 歯ぎしり・食いしばり
睡眠中などの強い力は、歯の根元に集中して微細なひび割れ(アブフラクション)を引き起こし、欠損の原因となることがあります。
【歯科医の視点】本当の主な原因は?
以前は「歯ぎしり・食いしばり」が主な原因と考えられていましたが、最近の研究では、実際には「強すぎる歯磨き圧」や「研磨剤」による物理的な摩耗の影響がより大きいという見解が主流になりつつあります。つまり、毎日のセルフケアを見直すことが何より重要なのです。
放置するとどうなる?進行度別の3つのリスク
くさび状欠損が進行すると、見た目だけの問題ではなく、様々な症状が現れます。
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- 【初期症状】知覚過敏
冷たい水や風が当たったときに「キーン!」と鋭い痛みを感じます。不思議なことに、欠損が大きくても無症状な人もいれば、ごく小さくても強い痛みを感じる人もいます。 - 【中期症状】虫歯・歯周病リスクの増大
削れてできた段差やくぼみに歯垢が溜まりやすくなり、二次的な虫歯や歯周病のリスクが高まります。 - 【重度症状】神経への影響・歯の破折
欠損が神経に達すると激しい痛みが出たり、最悪の場合、歯がその部分からポキッと折れてしまう危険性もあります。
- 【初期症状】知覚過敏
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【今日からできる】くさび状欠損を防ぐ“歯磨き”3つの鉄則
くさび状欠損の対策で最も大切なのは、これ以上進行させないための**「原因除去」**です。毎日のセルフケアを見直しましょう。
鉄則① 歯ブラシの持ち方:「鉛筆持ち」に変える
歯ブラシはグーで握らず、「鉛筆を持つように」軽く持ちましょう。それだけで余計な力が入らなくなり、優しいブラッシングが可能になります。
鉄則② 力加減:「毛先が開かない」が目安
鏡を見ながら、歯ブラシの毛先が開かないくらいの優しい力で磨きましょう。毛先が歯の表面に軽く触れる程度で、汚れは十分に落ちます。
鉄則③ 歯磨き粉の選び方:「低研磨・ジェルタイプ」を選ぶ
「低研磨」「研磨剤無配合」と書かれたものや、発泡剤の少ないジェルタイプの歯磨き粉がおすすめです。知覚過敏用の歯磨き粉(硝酸カリウムなどが配合されたもの)も症状緩和に効果的です。
くさび状欠損の歯科医院での治療法
セルフケアでの改善が難しい場合や、症状が強い場合は、歯科医院での治療が必要です。
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- 薬剤の塗布:症状が軽い場合は、歯の表面にしみ止めの薬剤を塗布して、神経への刺激をブロックします。
- プラスチック(レジン)での修復:欠損が大きい場合や見た目が気になる場合は、削れた部分を歯科用のプラスチックで埋めて修復します。見た目も改善し、しみる症状も軽減できます。
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ただし、根本原因である歯磨きの癖などを改善しないと、詰めたものが取れたり、その周りがまた削れたりする可能性があります。治療とセルフケアは、必ずセットで行うことが重要です。