【歯科医師が解説】その歯磨き、間違いかも?虫歯を防ぐ正しい方法と選び方
「毎日、時間をかけてしっかり歯を磨いているのに、検診で虫歯が見つかってしまった…」
「丁寧にケアしているつもりでも、歯茎の腫れがなかなか引かない…」
鏡の前で、そんな風にがっかりした経験はありませんか? もしかしたら、その毎日の歯磨き、良かれと思ってやっていることが逆効果になっているのかもしれません。
この記事では、歯科医師・矯正医の視点から「なぜ頑張って磨いてもトラブルが起きるのか」という疑問に答え、今日から実践できるプロの歯磨きテクニックを余すところなくお伝えします。正しい知識を身につけ、一生モノの健康な歯を手に入れましょう。
その歯磨き、大丈夫?
あなたの習慣セルフチェック
- 食後すぐに歯を磨いている
- 歯ブラシは毛先が硬いものが好きだ
- ゴシゴシと力を入れて磨かないとスッキリしない
- 歯ブラシを交換するのは、毛先が開いてからだ
- 歯磨き粉は泡立ちが良いようにたっぷり使う
- 歯と歯茎の境目を意識して磨いたことがない
一つでも当てはまった方は、ぜひこの記事を読み進めてください!
なぜ?毎日磨いているのに虫歯になる3つの理由
「磨いている」と「磨けている」は、実は全く違います。多くの方が陥りがちな、虫歯や歯周病を招いてしまう歯磨きの落とし穴を3つのポイントから解説します。
理由1:磨く「タイミング」が間違っているかも
以前は「1日3回、毎食後すぐ」が常識とされていましたが、実は食後すぐの口内は注意が必要です。食事によって口の中が酸性に傾き、歯の表面のエナメル質が一時的に柔らかくなっています。この状態でゴシゴシ磨くと、歯の表面を削り取ってしまうリスクがあるのです。食後は、まず唾液が口内を中性に戻すのを待つのが賢明です。
理由2:あなたの口に「歯ブラシ」が合っていないかも
歯ブラシなら何でも同じ、と思っていませんか?ヘッドの大きさや毛の硬さは、磨き残しに直結する重要な要素です。ヘッドが大きすぎると奥歯の隅々まで届きにくく、毛が硬すぎると歯や歯茎を傷つけてしまう原因になります。ご自身の口の状態に合わない歯ブラシを使い続けることが、トラブルの引き金になっているケースは少なくありません。
理由3:効果半減?「磨き方」が自己流になっているかも
最も重要なのが「磨き方」です。力を入れてゴシゴシ磨けば汚れが落ちるわけではありません。むしろ、強すぎる力(ブラッシング圧)は歯の根元を削ってしまったり(くさび状欠損)、歯茎を退縮させたりする原因になります。歯並びや目的に応じた正しい磨き方を実践できていないと、磨いているつもりでもプラーク(歯垢)はしっかり残ってしまいます。
【プロが教える】今日から変わる!正しい歯磨きの完全ガイド
それでは、具体的にどうすれば「磨けている」状態になるのでしょうか。歯磨きの効果を最大化するための4つのステップをご紹介します。
STEP1:歯ブラシの選び方 – 目的別のポイント
- ヘッドの大きさ:「小さめ」がおすすめです。一度に磨ける範囲は狭くなりますが、その分、奥歯や歯の裏側など、細かい部分にブラシが届きやすくなります。
- 毛の硬さ:基本的には「ふつう」を選びましょう。歯茎が敏感な方や炎症がある場合は「やわらかめ」が良いですが、汚れを落とす効率は少し下がります。「かため」は歯や歯茎を傷つけるリスクが高いため、歯科医師の指導がない限りは避けましょう。
どの歯ブラシが自分に合っているか分からない場合は、ぜひ当院にご来院の際にご相談ください。あなたのお口の状態に最適な一本をご提案します。
STEP2:歯磨きのベストタイミングとは?
先述の通り、食後すぐの歯磨きは歯を傷つける可能性があります。理想的なのは食後30分以上経ってから。唾液の力で口内が中性に戻り、歯の再石灰化が始まったタイミングで磨くのがベストです。
もし1日3回が難しい場合は、朝と夜の2回でも構いません。特に夜寝る前の歯磨きは最も重要です。就寝中は唾液の分泌が減少し、細菌が最も繁殖しやすい時間帯。ここでプラークを徹底的に除去することが、虫歯や歯周病予防の最大のカギとなります。
STEP3:目的別・正しいブラッシング方法4選
歯の磨き方にはいくつか種類があります。ご自身の歯の状態や目的に合わせて使い分けるのが理想です。代表的な4つの方法をご紹介します。
① スクラッピング法(歯の表面を磨く基本の磨き方)
歯ブラシを歯の面に直角(90度)にあて、軽い力で小刻みに左右に振動させます。歯を1本ずつ丁寧に磨くイメージです。シンプルで簡単なため、お子様にもおすすめです。


② ローリング法(歯茎のマッサージと汚れ除去)
歯ブラシの毛先を歯茎にあて、手首を返すようにクルッと回転させて歯の表面を掃くように磨きます。歯茎の血行促進にも効果的です。

③ フォーンズ法(主に子供向けの簡単な磨き方)
上下の歯を軽く噛み合わせた状態で、歯ブラシを歯の面に直角にあて、円を描くようにクルクルと磨きます。主に小さなお子様が楽しく歯磨きを覚えるのに適した方法です。
④ バス法(歯周病予防に最も効果的な磨き方)
歯周病ケアで最も重要な磨き方です。歯ブラシの毛先を、歯と歯茎の境目に45度の角度で差し込むようにあてます。そして、ごく軽い力で小刻みに振動させ、歯周ポケットの中の汚れを掻き出します。

STEP4:歯磨き効果を最大化する3つのコツ
- 1. 力の入れ具合:150〜200gの力が理想です。これは「鉛筆で字を書く」程度の軽い力。歯ブラシをペンを持つように握ると、余計な力が入りにくくなります。
- 2. 歯磨き粉の量:つけすぎはNG。泡立ちで口の中がいっぱいになり、磨けた気になってしまうためです。歯ブラシの毛先に「あずき一粒大(1cm弱)」程度で十分です。フッ素配合の歯磨き粉は虫歯予防に効果的です。
- 3. 歯ブラシの交換時期:1ヶ月に1回が目安です。毛先が広がった歯ブラシでは、プラーク除去率が大幅に低下します。裏側から見て毛先がはみ出していたら、すぐに交換しましょう。
歯磨きのよくある疑問 Q&A
患者様からよくいただく質問にお答えします。
電動歯ブラシは手磨きより良いですか?
正しく使えば、手磨きよりも短時間で効率よくプラークを除去できます。ただし、電動歯ブラシも「ただ当てれば良い」わけではありません。歯に当てる角度や場所が重要です。機種によって使い方が異なるため、購入したら説明書をよく読み、不安な場合は歯科医院で指導を受けることをお勧めします。
歯磨き粉はどんなものを選べばいいですか?
目的に合わせて選びましょう。虫歯をしっかり予防したいなら「高濃度フッ素配合」のもの、歯がしみる(知覚過敏)のが気になるなら「硝酸カリウム」などの成分が入ったもの、歯周病が気になるなら「殺菌成分」や「抗炎症成分」配合のものがおすすめです。迷ったら、ぜひご相談ください。
まとめ:毎日の正しい歯磨きが、未来のあなたを守ります
歯科医院でのクリーニングも大切ですが、お口の健康を左右するのは、何よりも毎日のセルフケアです。今回のポイントをまとめます。
- 歯磨きは食後30分以上経ってから。特に夜寝る前は入念に。
- 歯ブラシは「ヘッドが小さめ」「毛の硬さはふつう」が基本。
- 力は入れすぎず、鉛筆を持つ程度の軽い力で磨く。
- 歯周病予防には、歯と歯茎の境目を狙う「バス法」が効果的。
- 歯ブラシは1ヶ月に1回、毛先が開く前に交換する。
「たかが歯磨き、されど歯磨き」です。今日から一つでも実践していただくことで、あなたの歯の未来は大きく変わります。正しいケアで、10年後、20年後もご自身の歯でおいしく食事ができる喜びを守っていきましょう。
あなたの歯磨き、一度プロにチェックさせてください
「自分の磨き方が本当に合っているか不安…」「どのケアが自分に最適なのか知りたい」
そんな方は、ぜひ一度、大阪つつい・矯正歯科へご相談ください。
専門家があなたのお口の状態をしっかり拝見し、最適なケア方法を丁寧にご提案します。