【差し歯・詰め物が取れて飲んだら?】どうしよう?歯科医師が対処法と“本当のリスク”を解説
食事中や歯磨きの最中に、突然、歯の詰め物や差し歯がポロッと取れてしまう…。焦りますよね。中には、うっかり飲み込んでしまってパニックになる方もいらっしゃいます。
でも、まずは落ち着いてください。ご安心ください。この記事では、そんな緊急時の正しい対処法と、実は飲み込んだことよりもっと重要な**「本当のリスク」**について、歯科医師が徹底的に解説します。
【緊急時】どうする?行動フローチャート
Q. うっかり飲み込んでしまいましたか?
息苦しさはありますか?
すぐに内科・呼吸器科へ
「誤嚥」の可能性があります
数日で便と排出されます
ティッシュに包みケースへ
【最終的な行動】必ず歯科医院を受診してください!
(どのルートでも、歯科受診は必須です)
飲み込んだ場合 ―「嚥下(えんげ)」と「誤嚥(ごえん)」の違い
飲み込んでしまった場合、その行き先によって危険度が全く異なります。
- 嚥下(えんげ):食道・胃に入った場合
ほとんどがこのケースです。咳き込みなどがなければ、食べ物と同じように食道から胃に入っています。通常、数日~1週間で便と一緒に自然に排出されるため、心配はいりません。ただし、腹痛や吐き気など体調に異変があれば、念のため内科でレントゲン検査を受けましょう。 - 誤嚥(ごえん):気管・肺に入った場合
飲み込んだ際に激しく咳き込んだり、息苦しさを感じたりした場合は、誤って気管に入ってしまった可能性があります。これを「誤嚥」といい、放置すると詰め物に付着した細菌によって「誤嚥性肺炎」を引き起こす危険性があるため、ただちに内科や呼吸器科を受診する必要があります。
【ここからが本題】なぜ、詰め物は“取れてしまった”のか?
飲み込んだこと自体は、ほとんどの場合問題ありません。しかし、本当に重要なのは**「なぜ、取れてしまったのか?」**という事実です。
詰め物や差し歯は、単に古くなったから取れるわけではありません。取れてしまったということは、その下で**何らかの問題が起きているサイン**なのです。
最大の原因は「二次虫歯(にじむしば)」です
詰め物と歯の間にできたわずかな隙間から虫歯菌が侵入し、内部で虫歯が再発することを「二次虫歯」といいます。接着剤が溶け、歯が内側から脆くなることで、詰め物がポロッと外れてしまうのです。
特に、神経を取った歯は痛みを感じません。そのため、「取れたけど痛くないから大丈夫」と放置していると、気づかないうちに虫歯が歯の根まで進行し、最悪の場合、歯を抜かなければならなくなってしまいます。
放置は絶対にNG!取れた歯をそのままにする本当のリスク
- 虫歯の進行:痛みがないまま歯の内部がボロボロになり、手遅れになる可能性があります。
- 歯の移動・噛み合わせの崩壊:空いたスペースに隣の歯や向かいの歯が倒れ込んできて、全体の噛み合わせが狂ってしまいます。
- 治療がより困難・高額に:放置した結果、簡単な詰め直しで済んだはずが、根の治療や抜歯、インプラントなど、より大掛かりで高額な治療が必要になります。
まとめ:取れたことは、歯からのSOSサインです
差し歯や詰め物が取れて飲み込んでしまっても、激しい咳き込みなどがなければ、過度に心配する必要はありません。
しかし、「取れてしまった」という事実こそが、あなたの歯が発しているSOSサインです。痛みがないからと放置せず、できるだけ早く歯科医院を受診してください。早期に治療することで、あなたの大切な歯を、より長く健康に保つことができます。